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高森明勅
2020.9.19 06:00皇室

新内閣発足と天皇

菅新内閣の発足。
この際、新しい内閣がスタートする為に、「天皇」という地位が
どのように関与しているかを、改めて確認してみよう。

誰でも気付く役割は、首相の「任命」と閣僚の「認証」。
9月16日、皇居で首相親任式と閣僚認証式が行われた。
このことは、ニュースでも取り上げられている。
だから、人々に広く認識されただろう。

首相の任命は憲法6条1項、閣僚の認証は7条5号に、
それぞれ根拠規定がある。
ここで見落とせないのは、首相を“任命する”天皇は、“任命される”首相より、
憲法上、「上位」に位置付けられている事実だ(閣僚を任命する首相が
任命される閣僚より“上位”にあるのと同じ)。

又、遡(さかのぼ)って、菅義偉氏が首相に「指名」されたのは、
同日の臨時国会での指名選挙の結果だった。
つまり、国会の「召集」がその前提だ。では、国会は“誰”によって
召集されるのか。

これも、「天皇」に他ならない(天皇の“詔書〔しょうしょ〕”が下される)。
翌日の国会開会式への天皇陛下のお出ましと、お言葉(これは上記詔書とは別)
の読み上げは印象に残っても、こちらの事実(国会の召集自体)は
見逃されがちではあるまいか。

憲法7条2号にその規定がある。
国会は「国権の最高機関」(41条)とされている一方、
同号では(“招”集ではなく)「“召”集」という文字を使っている。
召集とは「上位の者が下位の人々を呼び集めること」(明鏡国語辞典)。

憲法が前提とする国家秩序において、天皇は(内閣だけでなく)
国会より更に“上位”に位置付けられていることが分かる。
このように、新しい内閣の発足に当たり、天皇は“起点”となる臨時国会の「召集」と、
“終点”となる同国会で指名された首相の「任命」、その首相が任命した閣僚らの
「認証」という、いずれも“欠かせない”重大な役割を果たしておられる
(それぞれ国事行為)。

この点、念の為に注目を呼び掛けておく。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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